文学は何の役に立つのか?
書籍概要
文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな意味があるのだろうか。人間の生を真摯に見つめ、現代の問題群に挑み続ける小説家が、文学の力を根源から問う。大江健三郎、瀬戸内寂聴ら、先人たちの文業にも触れながら、芸術や社会へと多岐にわたる自らの思考の軌跡をたどる。読者を新たな視座へと誘うエッセイ・批評集成。 1 文学の現代性 文学は何の役に立つのか? 死までの遠近──ジョブズ、私の友人、ハイデッガー 初めてゲラを手にした時 予測不能な世界を生きるために──『本心』連載を終えて AIで亡き母を蘇らせたら また新たな基礎的教養書の登場 ──キャスリン・ペイジ・ハーデン『遺伝と平等──人生の成り行きは変えられる』 予期せぬことがなくなって──アンケート「予期せぬ笑い」 初めて真剣にワインを飲んだ日 傷ついた人間の痛みを語り抜く意志──ハン・ガン氏のノーベル賞受賞に寄せて 崩れ落ちてゆくような成熟──金原ひとみ『パリの砂漠、東京の蜃気楼』 “納得”することの他者性──遠野遥『改良』 奇妙な一年 作家と百年──『文藝春秋』創刊百周年に寄せて ゼロ年代のドストエフスキー 〈影響〉の構造化と愛──『白痴』(ドストエフスキー)を中心に 三島戯曲の世界──フランス語版三島由紀夫戯曲集Le Theâtre selon Mishimaに寄せて 2 過去との対話 個人と国家、そして諦念 鷗外の政治思想──『阿部一族』論 父子──古今名作散歩 体験、証言、記憶──成田龍一『「戦争経験」の戦後史』 恢復と自己貸与──ハン・ガン『すべての、白いものたちの』 事後的に発見され、新たな起点となる──私と安部公房 「日本」について質問された人──追悼 ドナルド・キーン 天性の人の語り手──瀬戸内寂聴さんのこと 瀬戸内文学の再評価に向けて──追悼 瀬戸内寂聴 「踏まえるべきもの」の絶えた時代に──追悼 古井由吉 大江以後も書き続けるということ──追悼 大江健三郎 戦後民主主義と文学 『オッペンハイマー』論──オッペンハイマーとクリストファー・ノーランの倫理 3 文学と美 「国家」と「自然」 新しい辞書のための四つの言葉の定義──ことば、ぶんじん、カッコいい、あい メビウスの輪を歩く人間──写真と安部公房 二度目の「さようなら」はなかった 実在を追究しないことの自由 領域としての黒──ヴァロットンの木版画 ボードレールの女性観──その一元性と多元性 豊饒なるゲルハルト・リヒター展 愉しいル・コルビュジエ 音楽も環境次第 「手書き」の文字と毛筆 「報酬性」と「懲罰性」 特別付録──弔 辞 ドナルド・キーンさんへの弔辞 瀬戸内寂聴さんへの弔辞 大江健三郎さんへの弔辞 あとがき
詳細情報
- ISBN
- 9784000617079
- 出版社
- 岩波書店
- 出版日
- 2025年7月18日
- カテゴリ
- エッセイ