あらすじ
「人も物もみな、神秘をたたえた、小さな妖精の国」と日本を初めて訪れた八雲は、感嘆の声をあげた。 出雲の松江という「神々の国の首都」での彼の見聞記は、人々の日常生活の中に分け入って、深くその心を汲みとろうという姿勢で貫かれ、みずみずしい感動と相まって、見事な文学作品にまで昇華されている。 旧(ふる)い日本と新しい日本が交錯する明治20年代の風物や風習、人々の姿を鮮やかに描いた名著。 [本書より] しかし、ああ、その光景の魅力はどうだろう。あの靄に浸されて定かならぬ朝の最初の艶やかな色合い。こういう朝の色綾は眠りそのもののように柔らかな靄から軽く抜け出て目に見える蒸気となってうごく。ほのかに色づいた霞は、長く伸び広がって湖の遙か彼方の端にまで達する。それは古い日本の画帖で読者も見たかもしれない長い帯状の雲で、それまで実物を見ていない限り、画家の気まぐれな思いつきと片付けてしまったかもしれない代物だ。山々の裾はすべてその霞で隠される。更に霞は果てしなく長い薄織布のように、より高い峰々をそれぞれ違った高さの所で横切って進む。この奇妙な霞の有様を日本語では霞が「棚引く」と言うが、…… ・東洋の土を踏んだ日 ・地蔵 ・盆踊り ・神々の国の首都 ・杵築(きづき) ・加賀(かか)の潜戸(くけど) ・美保関にて ・心中 ・八重垣神社 ・狐 ・日本の庭で ・家庭の祭屋 ・さようなら
書籍情報
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