被災した楽園
書籍概要
消えた観光客、人々の対立と連帯、忘却される記憶 マグニチュード9を超える地震が生み出した「インド洋津波」。被災した観光地では何が起き、そこにいる観光業の関係者は何を感じどう行動したのか。観光地プーケットと2004年インド洋津波災害との約10年にわたる関わりの軌跡を、気鋭の観光人類学者が余すことなく描き出す。 著者紹介 市野澤潤平(いちのさわ じゅんぺい) 宮城学院女子大学 現代ビジネス学部 教授。 Graduate School of Business, Assumption University(Master of Business Administration), Thai Studies Center, Chulalongkorn University(Master of Arts in Thai Studies)を経て、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻文化人類学コース博士課程単位取得退学。 専門は文化人類学、観光学。 著書に『ゴーゴーバーの経営人類学ーーバンコク中心部におけるセックスツーリズムに関する微視的研究』(めこん、2003年)、編著に『基本概念から学ぶ観光人類学』(ナカニシヤ出版、2022年)、共編著に『リスクの人類学ーー不確実な世界を生きる』(世界思想社、2014年)および『観光人類学のフィールドワークーーツーリズム現場の質的調査入門』(ミネルヴァ書房、2021年)。共訳書にヴァレン・L・スミス編『ホスト・アンド・ゲストーー観光人類学とは何か』(ミネルヴァ書房、2018年)。 はじめに 第1章 〈楽園〉の危機ーー観光地プーケットと津波災害 1 プーケットの発展史と在住日本人 2 2004年インド洋津波 第2章 風評災害ーー観光忌避の社会心理 1 インド洋津波災害のプーケット観光への影響 2 津波直後における在住日本人 3 風評災害としての観光客減少 第3章 危険からリスクへーー在住日本人における風評災害の経験1 1 リスクという視座 2 リスク化される危険 3 危険のリスク化と社会 4 リスクと環境の再帰性 第4章 プーケット復興委員会の熱い夏ーー在住日本人における風評災害の経験2 1 在住日本人たちの「よく分からないしんどさ」 2 マーケティング・アプローチの不発 3 プーケット復興委員会 4 不確実性とリスク 5 免疫化と存在論的不安 6 困窮者の声 第5章 楽しみとしての〈自然〉保護ーーダイバーたちによるサンゴ修復ボランティア 1 ダイビング観光と自然環境 2 インド洋津波による被害 3 サンゴ修復プロジェクト 4 〈自然〉保護を楽しむ 5 〈自然〉保護のゆくえ 第6章 楽しみのダークネスーータイと日本の災害記念施設の比較考察から 1 ダークツーリズムにおけるダークネスへのまなざし 2 インド洋津波後のタイ南部における被災地観光 3 ダークツーリズムの観光経験:タイ南部、神戸、広島の比較から 4 楽しみのダークネス:他者の死と苦しみを覗き見る 5 ダークツーリズムのアポリア 第7章 津波を忘却した〈楽園〉--観光地プーケットにおける原形復旧の10年 1 喉元過ぎれば熱さ忘れる? 2 観光地プーケットの被災 3 津波後プーケットの歩んだ道 第8章 〈楽園〉の現在ーー18年後のエピローグ 1 とめどない自然破壊 2 〈楽園〉のふたつの顔 3 〈楽園〉のゆくえ おわりに 参考文献 謝 辞
詳細情報
- ISBN
- 9784779517358
- 出版社
- ナカニシヤ出版
- 出版日
- 2023年3月31日
- カテゴリ
- テーマパーク